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第12回研究発表会を開催いたしました。

桜の花も開花し、めっきり春らしくなった先月29日(土)に第12回研究発表会が開催されました。会場は芝離宮、浜離宮にも近い東京都立産業貿易センター浜松町館です。

会場には当校の教員はもちろん、養成講座の修了生、各日本語学校、専門学校の先生方、ボランティアで日本語を教えていらっしゃる方など日本語教育に携わる多くの方がいらっしゃいました。開会前は、お互いの近況報告や情報交換などをされている姿があちらこちらで見られました。

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今回の総合テーマは「日本語教育の未来を見つめて」です。

①基調講演は「21世紀の日本語教育 21世紀型スキル・e-learning等のキーワードから考える」です。正に今回の発表会の冒頭を飾るにふさわしい内容でした。、講師の篠﨑大司先生(別府大学文学部国際言語・文化学科准教授)からICT技術を取り入れた日本語の授業スタイルをご紹介いただきました。講演を聞く前は「e-learningとかICTとか言われても、よくわからない」という方も中にはいらしたようですが、篠﨑大司先生は、メリット/デメリットも含めてわかりやすく丁寧にお話されました。講演が終わった後では「そんなに難しいものではないんですね」という声も聞かれました。これまでの対面授業のスタイルに縛られない、新しい時代の日本語教育について考えるきっかけになったのではないでしょうか。

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②研究発表は当校のベテラン教師、大村礼子、神本令子のWレイコ先生による「日本語能力試験 新傾向問題の分析と対策~N1・N2文法~」です。2010年より大きく変わった日本語能力試験が日本語学習者にどんな力を求めているのか、ということを出題例を挙げて、会場の参加者と一緒に分析しました。「(例に挙げた表現は)日本人がごく自然に使っているものなので、生の教材には数多く存在するはずである。それを逃さず取り上げていくのが教師の役割である」という結論に多くの方が頷いていらっしゃいました。

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③教育現場からの報告は当校の若手教師、田栗春菜先生の「生活者としての外国人が求めていることに対して日本語学校で何ができるか~文化庁委託事業『地域の日本語教室』の現場から~」です。本校が本事業の受託を開始して5年、これまでの経過を振り返り、今後地域の中で日本語学校はどのような役割を担うことができるのか。単なる報告ではなく、現場で学習者と向き合っているからこそ出てくる疑問や葛藤を交えての話がありました。発表後に「興味があるので今後かかわりたい」という方もいらっしゃったと聞いております。

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④最後は特別企画  「3.11被災地ボランティアをしている学生へのインタビュー」です。先日(4日前)当校を卒業したばかりの黄可為さんに日本語使用者の目を通して見た被災地ボランティアについて語ってもらいました。時折ユーモアを交えて自らの貴重な体験を語った彼の日本語は、完璧ではないものの確実に会場にいらした方の胸に届いた思います。後半は、インタビュアーとして当校の萩原秀樹先生が彼の活動と言葉から導かれた日本語教育観、あるいは教師観、学習者観といったものを提示しました。今後の日本語教育、日本語学校に貢献できるようないくつかの視点の見直し、捉え直し等を考える機会になったかと思います。

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以上で、プログラムは全て終了しました。どの発表も前述した総合テーマ「日本語教育の未来を見つめて」にふさわしく、これから日本語学校および日本語教育に携わっていく人にとって必要な内容、役に立つ内容だったと思います。閉会後も発表者のところへ行って質問している方、お互いに感想を話されている方などが見られましたが、時間が限られていたことが残念でした。

 

 

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