Archive for 萩原秀樹

アキバの日本語

「アキパの日本語」 25名の受講生を集め、好評開講中です。

アニメ、マンガ、同人誌、メイド、あるいはゲーム、パソコン関係、さらには鉄道、その他その他、いわゆるアキバ的な風物、オタク文化と称されるものを取り上げるわけでは、あらず。それらは、学生の方がはるかに知っていて、新鮮味に欠けます。わざわざ取り上げるまでも、なし。もちろん、それらを各自の視点から解釈し、報告してもらうのも、アイディアとしては、あり。しかし、私は関心がありません。

そこで、扱うのは受講生の視野を広げるためのトピックの数々。そもそも、今の秋葉原駅は「秋葉原」には位置していません。正確には「千代田区外神田」。学生が知っている(徘徊している?)アキバは、その大半が「神田○○町」に該当します。秋葉原はもともと「アキバハラ」と呼ばれていました。というか、それがまっとうな読み方。そんな、歴史的、地理的、あるいは日本語的な小ネタからして大きな誤解が集積しているのが、今のアキバ。そして、秋葉原、お茶の水、神田の3駅を結んだ三角形のエリアとその周辺が、広い意味での「アキバ」と言えるでしょう。

で、初回の課題は、「万世橋」まで足を延ばすことでした。名店「肉の万世」のほか、近年オープンした「MAAch」という、旧万世橋駅下の商業施設。これらを知っていたのは、だれ一人、いません。行くはずなんて、ありません。神田川? なんて初めて知ったという受講生も。実際に足を運んでみて、こんなそばにこんなものが…驚いた…というのが大半の反応でした。yjimage

課題第2弾は、万世橋の向こう、つまり神田須田町、小川町、岩本町界隈に散在する「老舗」を訪ねること。食べてみること。もちろん、秋葉原駅周辺にもそういったお店があります。古くは江戸時代から、多くは明治時代から続く老舗の数々。受講生がどのようにレポートを書いてくるのか、楽しみです。

ネタは、探せばいくらでも転がっています。それをアレンジして提供するのが、私の仕事。次回の授業からは、アキバのディープな世界、さらに闇の部分にも踏み込む予定。その最たるものについて、いつかここで報告する機会があるでしょうか。

ちなみに、学生と評判のケバブを食べてきました。おいしかったです。

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グルメ

先日の深夜ドラマ「孤独のグルメ」 ご覧になりましたか?

学校そばの「佐竹商店街」を、主演の松重豊さんがふらりと歩き、要所要所で立ち止まりつつ、この土地の独特の風情を愉しんでいる様子が映っていました。

さらにもうひとつ、(知る人ぞ知る)「おかず横丁」にまで足をのばし、偶然見つけた居酒屋「まめぞ」に立ち寄り、ひたすら食べ続けるのでした。

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その食べっぷり、食を堪能する姿は、原作コミックの雰囲気をよく伝えているようにも感じましたが、何だかいまひとつだったなぁ・・・と感じた同僚の先生もいらっしゃったとか。

でも、ただ食べるだけのドラマであって、いわゆるグルメ番組ではないので、いいのではないかと。

ま、私は原作(画:谷口ジロー、作:久住昌之)のほうがお気に入りですが・・・。

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ちなみに、谷口ジローさんの作品が私は大好きで、著書に画入りのサインをいただいたこともあります。

お気に入りは・・・『歩くひと』『犬を飼う』『ブランカ』あたりですかね。

そうそう、『歩くひと』は学生にも評判、よかったんですよ。意外に。これが。(萩原)

プチ自慢

上級クラスで高校の国語教科書を使っています。

三省堂発行の『国語総合 現代文編』。25KouKoukokugoSogo1

採用にあたっては、老舗の明治図書とか筑摩書房もながめましたが、正直言って、どれも似たり寄ったり。 いわゆる定番教材的なものがずらりと並んでいます。 もちろん、芥川龍之介「羅生門」や太宰治「富岳百景」に代表される定番のそれが悪いわけでは決してありません。 でも、せっかくだから学生の関心をもう少し引くような、比較的新しめのものに接する機会を・・・ ということで、この一冊に。

収録作品は私の好きな 川上弘美「神様」のほか、文章の美しい 福岡伸一「生物と無生物のあいだ」。そして 思想家の内田樹、科学者の池田清彦、作家の多和田葉子といった論客。 いずれも各界で活躍中の方々ですね。もちろん、鈴木孝夫、山崎正和といった長年採用の大家もはずしていません。

ですが、そうした作品に勝るとも劣らず、ポイントになったのは、装丁。 なかなかしゃれている。本文のデザインも地味ながらセンスがいい。 だれの手になるものなのかなぁ・・・と思って奥付を見たら、 「クラフト・エヴィング商會」とありました。 近年、装丁に限らず、さまざまな分野で活躍中の夫婦によるユニット名。 この教科書の巻末にも、ウィットに富んだステキな文章をさりげなく寄せています。目下、世田谷文学館では初の展覧会が開催中。

今週の授業では、村上春樹訳のティム・オブライエン「待ち伏せ」を読み、その訳文の巧みさに、学生ともども感心していたしだいです。この作品も定番教材のよう。 また、中村安希「インパラの朝」は筆者が執筆当時20代だったことに学生は驚き、その内容にも共鳴した人は文庫本を買い求めていました。作品の力ですね。

そんなこんなで、学生にも比較的評判のいい教科書なのですが、協働しているほかの先生からも、「これはいい選択だった」とお褒めのことばをいただきました。 つまり、私の眼力もまんざらではないということで。プチ自慢。 萩原でした。