長期コースの教師、神本です。
中級や上級のクラスで、「基礎文法」を担当する時には、
「基礎文法ができる人が、本当に日本語が上手な人です。」と学生にいつも言っています。
ちょっとの違いが大きな違いだからです。
基礎文法は、助詞・動詞の変化「辞める/辞められる/辞めさせられる」又は文末表現
の使い方が主ですが、
動詞を「~る」で言うか「~た」で言うか「~ている」で言うか「~ていた」で言うかは、とても学生が苦戦します。
例えば
「ゆうべ3時まで(起きていた)ので、今日は眠い。」は難しい。
同じ状況を言いたかったら、学生は間違いなくみんな、
「ゆうべ3時に寝た」と言います。
「ゆうべ3時まで起きていたので…」をすっと使えたら、かなりの実力者。自然な日本の使い手と言えるでしょう。
他の例で言うと、
A《動物園のサル山を見て》
暑いからかな?サルたちみんな寝ているね。あっ、あの子(起きている)。かわいい!
B《完全に徹夜をして、翌日の正午》
あ~あ、疲れたな。昨日の朝は7時に起きたんだから、
もう、29時間も(起きている)んだもん。
AもBも、難しくありませんが、「ゆうべ3時まで起きていた」は日本語らしい表現(日本語ならではの表現)と言えるでしょう。英語母語話者の学生に聞いてみたら、英語にその表現がないわけではないが、あまり使わないとのこと。中国語も、この言い方はないそう。
日本語では逆に、「ゆうべ3時に寝た」はあまり使わないと言えるのではないでしょうか。「3時に寝た」というより、「3時まで起きていた」の方が過酷な感じを受けます。
また、学生にとって難しいものをもう一例。
《会社で》
S:今日の打ち合わせ、何時からでしたっけ?
T:えっ、今日だったんですね。すっかり忘(れていまし)た。
これも、殆どの学生が、「忘れてしまいました」。や「忘れました」という誤答。
学生は、どういうわけか、「~てしまいました」が大好きで、この間違いが多し。
そんなに「~てしまいました」を使いたかったら、
「えっ、今日だったんですね。すっかり忘(れてしまっていまし)た。」になりますね。
相手に、打ち合わせのことを言われて、思い出したその時点で、
「忘れている」から「忘れていた」に変わるダイナミズムはすごい。すごいぞ!日本語!
同じく、(PCをチェックして)「修理に出したのに、(直っていない)。変だなあ。」
の「直っていない」も正解できる学生はごく少数。
「直らなかった」の誤答が多いです。
日本語の基礎文法の中でも、このアスペクト(その動き・動作などが、今どんな段階にあるかという文法表現)を、使いこなすのは至難の業。
「基礎文法ができる人が、本当に日本語が上手な人です。」と言っている由縁です。
アスペクトの説明の時は、線を引いて、区切りを付けたり、波線にしたり、いろいろ工夫して、わかってもらう努力を重ねているわけです。わかってくれると、私としては、とてもうれしい瞬間を迎えます。
☆最近の私の疑問(基礎文法ではありませんが)
お笑いの人で、「シュウペイです!」と言って両手をクロスして、おどける芸人がいますが、
なんで、「シュウペイ」なのか。「シュウヘイ」じゃないのか。
「シュンペイ」なら、わかる!「純白」「新品」「三分」「短編」「憲法」などで分かるように、
撥音「ん」の後のハ行音がパ行音になる音変化です。
みんなが、「シュウヘイ」と読み間違えるから、
わざわざ「シュウペイです!」と自分の名前をアピールしているのでしょうか。そうなら、涙ぐましいですし、この名前は、言わなくては読めないので、納得します。真相はいかに?
わたらせ渓谷鐡道「線路は続くよ どこまでも」
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