言われてどうもすっきりしない表現があります。それは、「ありがとうございます。」という表現です。
何?アホぬかせ!とお思いの方もいらっしゃるかと思います。私が如何に変人だとは言っても、
私 :おすすめはありますか。
店員:こちらはいかがですか。
私 :じゃ、それをお願いします。
店員:ありがとうございます。
こういう流れで(どういう流れかよくわからないかもしれませんが)使われる「ありがとうございます」に文句をつけようなどというという気はさらさらありません。
じゃどんな「ありがとうございます」がすっきりしないのかというと、カフェなどで飲食が終わって、あるいは何か物を買ってその店を出ようとするときに言われる「ありがとうございます。」です。どうして「ありがとうございました。」じゃないんだろうと思ってしまうのです。
もちろん、しょっちゅう行っている店で帰りがけに「いつもありがとうございます。(またよろしくお願いいたしします。)」と言われるのなら、引っかかることはありません。
通常、「V辞書形/Vます」は非過去、「Vた形/Vました」は過去と区別されるようです。おなじみの例ですが、
・トンガへ行くときにガイドブックを買います。
・トンガへ行くときにガイドブックを買いました。
・トンガへ行ったときにガイドブックを買います。
・トンガへ行ったときにガイドブックを買いました。
この4つの文の違いは、「行く」と「行った」は本動詞の時制に対して・・・という説明をすれば過去/非過去の対立で説明できなくもありませんが、何かすっきりしないところもあるように思えます。どの場合でも正しいかどうかは言えませんが、この場合は完了/不完了の対立と考えたほうがいいような気がします。実際スラブ系の言葉では、動詞に完了体/不完了体という区別があるそうです。ただ、完了体、不完了体の動詞それぞれに現在形と過去形が存在するらしいので、同じには語れないと思いますが。
先ほどの「ありがとうございます」と「ありがとうございました」の話に戻りますが、
私自身は、お礼を言うべき/言われるべきサービスが完了しているかどうかで判断しているようです。帰りがけに「ありがとうございます」と言われてすっきりしないのは、もうサービスが完了しているから、よく通っている店で「いつもありがとうございます」で引っかからないのは(個々のサービスではなく)継続的にその店を利用しており、その意味でサービスが完了していないと思っているからなのでしょう。
では最後に、
次のような場合、( a )( b )に入る言葉の組み合わせのうち、最もすっきりするのはどれでしょうか。
A:本日も中日本旅客鉄道をご利用いただき、( a )。この電車は当駅始発の東京行きでございます。発車まで3分ほどお待ちください。
B:間もなく終点東京に到着いたします。本日も中日本旅客鉄道をご利用いただき、( b )。
1.(a)ありがとうございます (b)ありがとうございます
2.(a)ありがとうございます (b)ありがとうございました
3.(a)ありがとうございました (b)ありがとうございます
4.(a)ありがとうございました (b)ありがとうございました
5.(a)、(b)とも、どちらを使っても問題ない
私は、なんといっても”2“なのですが、皆様はいかがでしょうか。
おっさんの屁理屈でした。